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  • 『エル・グレコ展』国立西洋美術館 編

    ¥3,000

    「エル・グレコは今日、ベラスケス、ゴヤとならんでスペイン絵画の三大巨匠の一人として知られています。地中海に浮かぶ生まれ故郷のクレタ島で修得した後期ビザンティン美術と、イタリアで学んだルネッサンス美術の精華をふまえて、彼はスペインの古都トレドでそのあふれんばかりの想像力を発揮しました。狂おしいまでの宗教的情熱を神秘的な彩と揺らめく形態に託して表現した数々の大作、無想・啓示・梅後の様を見事にとらえた聖人像、深い優をたたえた厳粛な肖像画は、どれも一見してこの画家独自の画風を示しています。また。その時代を超越した独創性は、20世紀絵画にも多大の影響を与えています。」 ------------------------------ 1986年に国立西洋美術館で開催された「エル・グレコ展」の公式図録。会期は1986年10月18日から12月14日まで、主催は国立西洋美術館と東京新聞、出品は絵画49点だった。のちに奈良県立美術館、愛知県美術館にも巡回している。 【タイトル】エル・グレコ展 【筆者】国立西洋美術館 編 【出版社】東京新聞 【出版年】1986年

  • 『〈消費者〉の誕生 近代日本における消費者主権の系譜と新自由主義』林 凌

    ¥3,000

    「私たちにとって消費者という言葉は馴染み深いが、自らがそうであると認識することは少ない。つまり、〈消費者〉は他者をカテゴリー化する際に用いられることはあっても、自認されることは稀な概念なのだ。」 ------------------------------ 日々の購買や選択は、自由のようでいて、制度や価値観の強い影響のなかにある。そうした当たり前を本書は歴史的にほどいていく。近代日本において「消費者」という存在がどのように形づくられてきたのかをたどりながら、消費者主権や新自由主義の問題系までを見通そうとする一冊。 【タイトル】〈消費者〉の誕生 近代日本における消費者主権の系譜と新自由主義 【筆者】林 凌 【出版社】以文社 【出版年】2023年

  • 『愛・セックス・結婚の哲学』R・ハルワニ

    ¥5,000

    「もし恋愛に価値があるのなら、これは私たちが、恋愛はしばしば、各種の理由に対して非反応的である──たとえば、xがどんなに見た目がよく道徳的に善良でも、yはxを愛さないことがある──という事実をどう扱うかということに影響を与えるでしょう。」 ------------------------------ 著者のラジャ・ハルワニは、レバノン出身のアメリカの哲学者。「セックスの哲学」の第一人者として知られる。本書でも、恋愛・セックス・結婚を道徳や常識の確認に留めず、親密さとは何か、結婚制度は何を守り何をこぼすのか、性愛をめぐる価値観はどのように形づくられているのかといった問いに向き合っている。刺激的な題名に見えて、実際にはかなり真面目で骨太な哲学書。 【タイトル】愛・セックス・結婚の哲学 【筆者】R・ハルワニ 監訳:江口 聡/岡本 慎平 【出版社】名古屋大学出版会 【出版年】2024年

  • 『なんで家族を続けるの?』内田 也哉子/中野 信子

    ¥500

    内田「人間にとって何が最も幸せなのか。それは一人ひとりケースバイケースでしょうけれど、中野さんが思う幸せのカタチについてお聞かせくださいませ。」 中野「私は微分だと思うんです。」 内田「微分? もしかして数学なら私、できません(笑)。」 ------------------------------ 内田也哉子は、エッセイや翻訳、インタビューを通じて、家族やことばの揺らぎを繊細に掬い上げてきた書き手である。一方、中野信子は、脳科学の知見を足場に、人間の感情や関係性を構造的かつ批評的に読み解いてきた。 両者の語り口は対照的だ。内田が感情の微細な襞に耳を澄ませるのに対し、中野は制度や本能の側から親密圏を解剖する。しかしその差異こそが、本書に単なる対談集以上の厚みを与えている。家族を無条件に肯定すべき共同体として神聖化するのでもなく、逆に旧弊な制度として一刀両断に否定するのでもない。むしろ両者は、愛情、依存、ケア、負担、孤独といった相反する感情が複雑に絡み合う場として家族を捉え直そうとする。 そこで問われているのは、「なぜ人は、それほど不自由で不均衡な関係を、それでも維持し続けようとするのか」という根源的な問いだ。親密さとは安心であると同時に暴力性を孕むものでもあり、ケアとは献身であると同時に拘束にもなりうる。本書は、そうした割り切れなさを安易な癒やしや断罪へ回収せず、言葉によって丁寧に可視化していく。 【タイトル】なんで家族を続けるの? 【筆者】内田 也哉子/中野 信子 【出版社】文藝春秋 【出版年】2021年

  • 『新装版 チョコレート革命』俵 万智

    ¥1,000

    逢うたびに抱かれなくてもいいように一緒に暮らしてみたい七月 「勝ち負けの問題じゃない」と諭されぬ問題じゃないなら勝たせてほしい 妻という安易ねたまし春の日のたとえば墓参に連れ添うことの 男ではなくて大人の返事する君にチョコレート革命起こす 水蜜桃の汁吸うごとく愛されて前世も我は女と思う ------------------------------ 俵万智の作品のなかでも、とりわけ恋愛の熱が濃く出た詩集。著者28歳から34歳までの作品群。 【タイトル】新装版 チョコレート革命 【筆者】俵 万智 【出版社】河出書房新社 【出版年】1997年

  • 『春の夜の夢』竹久 夢二

    ¥3,000

    Every piece Yumeji painted was well suited to its book and vivified it so beautifully ── because, in fact, the picture came from his inner world, the poem from his own heart. ------------------------------ 竹久夢二の装幀・絵・作品世界をひとつの箱のなかに閉じ込めたような本。 夢二の仕事は、ただ“抒情的”というだけではなく、退廃と可憐さも同居し、その美しさが残る。 龍星閣から刊行された竹久夢二の画集。外函・帙入りの特装本。 【タイトル】春の夜の夢 【筆者】竹久 夢二 【出版社】龍星閣 【出版年】1968年 【備考】特装本

  • 『The Temple of the Golden Pavilion』Yukio Mishima

    ¥1,500

    Ever since my childhood, Father had often spoken to me about the Golden Temple. ------------------------------ 三島由紀夫『金閣寺』の英訳版。 赤い表紙の強さも印象的だが、この小説そのものが、美と破壊、崇拝と嫌悪、憧れと劣等感がねじれたまま共存する、あまりに危うく美しい名作だ。 英語に移し替えられたことで、より三島の硬質な熱や緊張が別のかたちで立ち上がる。 【タイトル】The Temple of the Golden Pavilion 【筆者】Yukio Mishima 【出版社】Vintage 【出版年】2001年 【備考】Translation copyright © Alfred A. Knopf Inc 1959

  • 『ひとりになること 花をおくるよ』植本 一子/滝口 悠生

    ¥1,000

    「歳をとることで、おそらく母は小さくなっていく。それに反比例して、私はきっとまだまだ強くなる。なんとなく、そこが逆転する瞬間にしか、対等に話は出来ないのではないか、そんな風に感じています。」(植本一子) 「来てみるまではこんな場所に来るとは思いもしなかった場所でお昼ご飯を食べ、ビールを飲みながら、ああひとりだ、と思う。娘のことを忘れるわけではないけれど、遠い、と思う。」(滝口悠生) ------------------------------ 植本一子と滝口悠生による往復書簡。手紙という、きわめて生活に近い形式のなかで、天気のこと、子どものこと、親との関係、さびしさとかなしさの違いのようなことが、少しずつ言葉になっていく。 相手に語りかけながら、同時に自分自身に向かって書いているようなそれぞれの文章。 写真家・植本一子と小説家・滝口悠生が、2021年11月から2022年4月にかけて交わした書簡。 【タイトル】ひとりになること 花をおくるよ 【筆者】植本 一子/滝口 悠生 【出版社】自費出版 【出版年】2022年 【備考】両著者サイン入り

  • 『向田邦子の本棚』向田 邦子

    ¥1,100

    「その頃、私は「大きくなったら本屋のオヨメさんになる」と言っていたらしい。無料で、しかも一日中本が読めると思ったのだろう。或時父に、食べながら本を読んでいるのを見とがめられ、 「食いこぼしがついたらどうする。そういうことでは本屋へヨメにゆけないぞ」 と叱られた。 将来書く側に廻ろうなど夢にも思わなかった時代のことである。」 ------------------------------ 向田邦子がどんな本を読み、どんな言葉に惹かれていたのかを辿る一冊。本棚を見ることは、その人の頭のなかを見ることと同じだ。小説やアート、食にまつわる本まで、向田邦子の読書の広がりが見え、興味深い。 【タイトル】向田邦子の本棚 【筆者】向田 邦子 【出版社】河出書房新社 【出版年】2019年

  • 『おんなのことば』茨城 のり子

    ¥1,000

    「人間は誰でも心の底に しいんと静かな湖を持つべきなのだ 田沢湖のように深く青い湖を かくし持っているひとは 話すとわかる 二言 三言で」 ------------------------------ 茨木のり子の言葉には、まっすぐで、強くて、少しこわいところがある。だがその強さは、人を押しつけるためのものではなく、自分の足で立って生きるための強さだ。 恋愛、結婚、老い、孤独、社会の息苦しさ──。そうしたものに対して、甘やかな慰めではなく、きっぱりした言葉を返してくれる。 代表作として広く知られる「自分の感受性くらい」「わたしが一番きれいだったとき」収録。 【タイトル】おんなのことば 【筆者】茨木 のり子 【出版社】童話屋 【出版年】1994年

  • 『猫を棄てる 父親について語るとき』村上 春樹

    ¥800

    「歴史は過去のものではない。それは意識の内側で、あるいはまた無意識の内側で、温もりを持つ生きた血となって流れ、次の世代へと否応なく持ち運ばれていくものなのだ。そういう意味合いにおいて、ここに書かれているのは個人的な物語であると同時に、僕らの暮らす世界全体を作り上げている大きな物語の一部でもある。ごく微少な一部だが、それでもひとつのかけらであるという事実に間違いはない。」 ------------------------------ 猫を棄てた記憶から始まり、戦争、家族、父との距離が、簡潔な言葉で少しずつ開かれていく──。 村上春樹が、自身の父について、そして来歴について書いた作品。 長い間小説を書いてきた作家が、あえてこのかたちで父を語ることの意味は大きい。 【タイトル】猫を棄てる 父親について語るとき 【筆者】村上 春樹 【出版社】文藝春秋 【出版年】2020年

  • 『或る一人の女の話・刺す』宇野 千代

    ¥500

    「いつでも私は自分のことばかりを中心に、小説を書いて来た。情けないやうな気もするが、反対に、こんな自分が気に入ってゐるのかも知れない。 こんなにいろんなことに追はれてゐた頃の自分は、凄く生き生きしてるたやうに思はれ、いま九十二歳の老齢になると、何事も行動することがにぶるやうな気がする。行動することが年齢とちょつと関係があることに気がついたのである。いや、ちょつとではなく、大分、関係があると思つたものである。 けれども私はこの齢になつても、考へるだけではなく、これからも行動して行きたいと思つてゐるのである。人間の考へることは、その人の行動によって引き出されることが多いと思ってゐるからである。」 ------------------------------ 歳月を経た人だけが持つ軽やかさと、どうしても消えない情念──本作は、その両方が表された一冊である。とくに「或る一人の女の話」は、年を重ねた女が、自分の生をどこか突き放したように、しかし確かに自分のものとして語る作品で、その声の強さが読後、強烈なインプレッションを残す。 【タイトル】或る一人の女の話・刺す 【筆者】宇野 千代 【出版社】講談社 【出版年】1989年

  • 『ロマネ・コンティ・一九三五年』開高 健

    ¥500

    「ぼつぼつはじめるとするか」 「いいね」 「どちらからやろう?」 「おまかせするよ」 「若いのは六歳、古いのは三七歳だ。となりどうしの畑でとれたけれど、名がちがうから、異母兄弟というところかな。本場中の本場、本物中の本物、ヴレ・ド・ヴレというやつさ。けれど、こればかりはどんなに血筋や年がよくても、あけてみるまではわからないんでね。うらむわけにもいかないけれど、ときどきガッカリすることがある。ことにブルゴーニュはそうだね」 「おまかせする。今日はこれに集中しようと思って、朝からタバコも吸わずにがまんしてるんだ。昨夜は昨夜で一滴もウィスキーを飲まなかった。毎晩、分量はべつとして、飲まないってことはないんだがね」 「たいそうな御精進ですな」 「それだけのことはあると思って来た」 ------------------------------ 過剰なくらい豊かな比喩表現が、短い器の中に詰め込まれている。 酒、食、性、土地の気配、そして生の濃度──。そのどれもが乾いておらず、むしろぬめるような手触りをもって迫ってくる。 【タイトル】ロマネ・コンティ・一九三五年 【筆者】開高 健 【出版社】文藝春秋 【出版年】2009年

  • 『きらきらひかる』江國 香織

    ¥800

    「素直にいえば、恋をしたり信じあったりするのは無謀なことだと思います。どう考えたって蛮勇です。 それでもそれをやってしまう、たくさんの向こう見ずな人々に、この本を読んでいただけたらうれしいです。 一九九一年、春。 江國香織」 ------------------------------ 江國香織の初期を代表する一冊。アルコール依存気味の妻・笑子と、同性愛者の夫・睦月という、いびつで、しかしどこか誠実なふたりの関係を描いた小説。 奇妙な夫婦関係から、誠実、友情、恋愛が浮かび上がる。第2回紫式部文学賞受賞。 【タイトル】きらきらひかる 【筆者】江國 香織 【出版社】新潮社 【出版年】1991年 【備考】第2回紫式部文学賞受賞

  • 『天上の花・蕁麻の家』萩原 葉子

    ¥500

    「大森の馬込村に住むようになったのは、大正十五年の暮であった。父朔太郎、母、それに学齢前の私と妹の四人暮しだった。 三好達治さんが、家に来られるようになったのは、その翌年ごろからである。 私は人見知りの強い子だったので、家に客が来ると素早く母の後ろに隠れてしまったり、戸棚にかくれたりした。 客の来るのが、何よりおもしろくなく、厭だったのである。だが、幸い父の書斎は二階で、玄関から入るとすぐ階段になっていたので、茶の間で遊んでいる私の姿を見かけられることもなく済んだ。 室生犀星さん、宇野千代さん等は足繁く家に来て、時には茶の間で家族的にくつろいでゆくこともあった。が、そんな時も、私は馴れずにこりともしないで、母の後ろに隠れていた。 だが、三好さんだけにはいつの間にか、馴れてしまった。」 ------------------------------ 萩原朔太郎の長女として知られる著者だが、この本を読むとその肩書き以上に、他者の弱さや破綻を見つめる独自の筆の強さが際立つ。読み味は静かだが、読後に残る棘は深い。 詩人・三好達治を描いた「天上の花」と、家族のなかで棘のような痛みを生きる「蕁麻の家」。どちらも華やかな文学史の裏側にある生身の感情や暮らしの陰影を鋭く、そして執拗に見つめた作品。 【タイトル】天上の花・蕁麻の家 【筆者】萩原 葉子 【出版社】小学館 【出版年】2020年 【備考】「天上の花」は第55回芥川賞候補作/「蕁麻の家」は第15回女流文学賞受賞

  • 『うつくしい日々』蜷川 実花

    ¥1,100

    「その日は、午後から撮影の仕事が入っていた。父は今日、亡くなるんだろうなとわかっていた。朝起きたら信じられないくらい空が青くて、あまりにも綺麗だった。どうせ逝くならこんな日がいいよね、って思った。」 ------------------------------ 蜷川実花が、父・蜷川幸雄の死に向き合う時間を撮った写真集。喪失のただなかでなお世界が美しく見える、痛みを含んだ“日々”の記録。 蜷川実花の写真は、華やかさや色彩の強さで語られがちだが、本作では家族の時間、光、季節、そして別れ──そのどれもが過剰に説明されず、それでも深く残る。 【タイトル】うつくしい日々 【筆者】蜷川 実花 【出版社】河出書房新社 【出版年】2017年 【備考】原美術館での同名展にあわせて刊行

  • 『文藝別冊 俵万智 史上最強の三十一文字』俵 万智

    ¥1,000

    別れ来し男たちとの人生の「もし」どれもよし我が「ラ・ラ・ランド」 ------------------------------ 俵万智を特集した『文藝別冊』。 三十一文字というきわめて小さな器のなかに、恋愛、生活、時代の空気がこれほどまでに入るのか──。 この特集を通じて俵万智という存在とは、単なる“ベストセラー歌人”ではなく、現代日本語の感覚そのものを変えてしまった書き手であることがよく理解できる。 【タイトル】文藝別冊 俵万智 史上最強の三十一文字 【筆者】俵 万智 【出版社】河出書房新社 【出版年】2017年

  • 『光と私語』吉田 恭大

    ¥2,000

    「たぶん前、あなたに言ったけど、という、何度か聞いたあなたの枕」 ------------------------------ 吉田恭大第一歌集。都市の景色や会話の断片、ふとした移動や時間の揺れのなかで生まれる“私語”のような言葉たち。その私語は、驚くほど遠くまで届く。 実験性と静かな感受性が重なり、一冊全体がひとつの舞台装置のようでもある。 【タイトル】光と私語 【筆者】吉田 恭大 【出版社】いぬのせなか座 【出版年】2019年 【備考】第54回造本装幀コンクール読者賞/日本タイポグラフィ年鑑2020入選

  • 『岡崎京子未刊作品集 森』岡崎 京子

    ¥800

    「最近よく思うことは すべてはばらばらでありつつ同時にすべてがつながっているということ。そしてそのことにすこやかに対処するのは とてもむつかしいということだ。」 ------------------------------ タイトルとなった未完作「森」第1話をはじめ、単行本未収録だった作品群やカラー原稿などが収められており、岡崎京子の仕事をあらためて立体的に感じられる一冊。 『ヘルタースケルター』以後の岡崎京子が向かおうとしていた場所、その途中で途切れてしまった線、そのどちらにも触れられるのが本作の大きな魅力だ。完成された代表作を読むときとは異なる作家の息づかいそのものに近づくことができる。 【タイトル】岡崎京子未刊作品集 森 【筆者】岡崎 京子 【出版社】祥伝社 【出版年】2011年

  • 『白い線』志賀 直哉

    ¥1,400

    「私が母と別れたのは今から六十一年前で、殆ど母の記憶という程のものはない。私の「大津順吉」という小説に、病気で寝ている時、祖母が熱くしたこんにゃくで下腹を温めてくれる、その時の祖母の体臭で不図自分の幼年時代を憶い出す事が書いてあるが、私は母の体臭は覚えていない。然し今でもはっきり憶い出せるのは母の足のふくらはぎに白い太い線のあった事で、母は女中のように尻を端折り、白い腰巻を出し、よつばいになってよく縁側を拭いていたが、そのふくらはぎにその白い線があったのを憶い出す。」 ------------------------------ 志賀直哉の文体には、余計な装飾を削ぎ落としたあとに残る言葉そのものの強さがある。本作『白い線』もまた、簡潔で静かな文体のなかにひやりとした緊張や感情の揺れが確かに刻まれている。 【タイトル】白い線 【筆者】志賀 直哉 【出版社】大和書房 【出版年】2012年 【備考】大和書房五十周年記念名作復刊

  • 『夢幻』曽野 綾子

    ¥1,100

    「私は生まれつき、ひどく妬み深い性質だった。妬み深いばかりではない、疑い深く、怨み深く、愛情とか善意とかはあまり信じない癖に、憎しみだけは永遠のものだ、という甚だひねくれた考えが、私の胸中に実に深々と根を張っていた。」 ------------------------------ 曽野綾子の文章には、現実の輪郭を確かめながら、その奥にある人の欲望や孤独、信仰や運命の気配まで見ようとする鋭さがある。本作『夢幻』は、現実と幻想、確かさと危うさのあわいに立つような感覚が残る短篇集。 【タイトル】夢幻
 【筆者】曽野 綾子
 【出版社】河出書房新社 
【出版年】2023年
 【備考】装幀:鈴木成一デザイン室

  • 『ねむり』村上 春樹

    ¥1,200

    SOLD OUT

    「夫も子供も、私が一睡もしていないことを知らない。そのことを私は黙っている。何か言うと、病院に行けと言われるだろうから。そして私にはわかっている。病院になんか行っても何ひとつ解決しない。これは私が自分ひとりで処理しなくてはならないものごとなのだ。」 ------------------------------ 昼の生活は崩れない。家事も育児もこなせる。けれど、眠らない夜のなかで、世界の輪郭が少しずつずれていく。その感覚が、じわじわと広がっていく一冊。 現実と逸脱の境目、日常の内部にひそむ不穏さ、そして夜だけがもつ奇妙な自由。短い作品ながら読み終えたあとに妙な余韻が残る。カット・メンシックによる挿画も美しく、物語の不安と静けさを支えている。 【タイトル】ねむり
 【筆者】村上 春樹
 【出版社】新潮社
 【出版年】2010年
 【備考】イラストレーション:カット・メンシック

  • 『貧困旅行記』つげ 義春

    ¥800

    「私の蒸発はまだ終ってはいないような気もしている。現在は妻も子もあり日々平穏なのだが、私は何処かからやって来て、今も蒸発を続行しているのかもしれない、とフト思うことがあるからだ。」 ------------------------------ つげ義春による、旅をめぐる随筆集。表題から受ける印象どおり、華やかな紀行文ではなく、どこか侘しく、しかし妙に忘れがたい風景や出来事が連なっていく──つげ作品に通じる陰影や可笑しみが、漫画ではなく文章のかたちで立ち上がる一冊。 【タイトル】貧困旅行記
 【筆者】つげ 義春
 【出版社】白泉社
 【出版年】1991年


  • 『タマ、帰っておいで』横尾 忠則

    ¥1,300

    「死にも希望があるかと思うと死もまた楽しいかな。猫の形をした人間タマへ。」 ------------------------------ 横尾忠則。1936年、兵庫県生まれ。グラフィックデザイナーとして活動したのち、1980年に「画家宣言」を行い、以後は絵画を中心に制作。舞台芸術のポスター、版画、絵画など領域を横断して活動してきた日本を代表する作家のひとり。 『タマ、帰っておいで』は、2014年に亡くなった愛猫タマを悼み、その魂を鎮めるように描かれた絵を収めた画集。 【タイトル】タマ、帰っておいで 【筆者】横尾 忠則 【出版社】講談社 【出版年】2020年 【備考】帯付き

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